2025年2月、丸吉ロジ(株)は中央鋼材(株)様と連携し、新たな輸送体制の構築に向けたモーダルシフトの導入を正式に発表しました。
関東と仙台を結ぶ鋼材輸送において、鉄道や船舶を活用した環境負荷の少ない輸送方法への切り替えを進めています。この試みは業界紙にも取り上げられ、当社が注力する業務効率の改善や、働きやすい労働環境づくりに対する取り組みが大きく報道されました。現場での工夫を重ねた混載輸送の運用や、専用シャーシの導入といった実践的な事例もあわせて紹介されています。
今回の記事は、前回の続編です。
目次
アコーディオン幌シャーシの導入で、ドライバーにやさしい物流を実現
重労働の解消と女性・シニアの活躍促進へ
鋼材輸送において、荷物を濡らさず、安全に届けることは最も基本であり、重要な条件のひとつです。
従来、この鋼材の保護にはシートがけが一般的でした。
しかし、この作業は見た目以上に過酷で、数十キロにもなる重たいシートをドライバーが一人でシャーシにかけるという、体力的に非常に負担の大きいものでした。
シートがけは転落の危険性もあり、経験と慣れが求められる作業でもあります。
実際、このシート作業の負担を理由に、ドライバー職を離れる方も少なくありません。
とりわけ高齢者や女性にはハードルが高く、「やりたくてもできない仕事」になってしまっていたのが実情です。
アコーディオン幌シャーシを早期に導入
そこで当社では、ドライバーの安全と働きやすさを第一に考え、スライド式のアコーディオン幌シャーシを積極的に導入しました。
現在、東日本の鉄鋼業界で最多の28台を保有しており、これは断トツの台数です。
このアコーディオン幌は、従来のように重いシートをかける必要がなく、幌をスライドさせるだけで荷物全体を覆うことができます。
これにより、1時間以上かかっていた作業がわずか5分程度に短縮され、大幅な効率化が実現。特に当社が取り組んでいる混載輸送の現場においては、非常に大きなアドバンテージとなっています。
ドライバー労働時間の削減がもたらす効果とは?
このアコーディオン幌シャーシの導入によって生まれる最大の効果のひとつが、ドライバーの労働時間の削減です。
1件あたりの荷役作業時間が短縮されることで、1日の拘束時間が減り、ドライバーはより安全かつ健康的に働けるようになります。
これは、今まさに業界が直面している「ドライバー不足」や「2024年問題」への明確な解決策のひとつとも言えます。
単なる省力化ではなく、重労働からの解放によって、高齢者や女性の新たな雇用機会の創出にもつながっています。
実際に、当社ではアコーディオン幌の導入後、女性ドライバー3名、倉庫作業職2名、倉庫管理職4名が現場で活躍中です。
これまで「自分には無理」と感じていた方々が、安心して働ける環境を整えたことで、多様な人材の活躍が進んでいます。
アコーディオン幌シャーシは、軽くて安全で、経験がなくても扱いやすいため、老若男女を問わず対応可能な点が大きな魅力です。
危険な重労働を減らすことは、単に企業の効率向上にとどまらず、業界全体が持続可能な方向へ進むための重要な一歩だと私たちは考えています。
モーダルシフト輸送とカーボンオフセットの取り組み
私たち丸吉ロジ株式会社では、持続可能な物流の実現に向けて【モーダルシフト輸送】と【カーボンオフセット(Jクレジット)】の両面から取り組みを進めています。
どちらもこれからの物流を考えるうえで欠かせない視点であり、当社としても積極的にチャレンジしている分野です。
モーダルシフトとは?
モーダルシフトとは、主にトラックなどの道路輸送で行われてきた貨物輸送を、鉄道や船舶といった環境負荷の少ない輸送手段へと切り替える取り組みです。
特にJR貨物や内航船などを活用することで、一度に大量の荷物を効率よく移動させることが可能になり、長距離輸送におけるトラックの代替手段として注目されています。
これは単なる代替手段ではなく、陸送の延長・発展型ともいえる新しい物流のかたちです。
国土交通省も今後10年で船舶や鉄道を使ったモーダルシフトによる輸送量を倍増させる方針を打ち出しており、国を挙げての推進が始まっています。
モーダルシフトを進める理由
モーダルシフトの導入には、さまざまな利点があります。
たとえば、トラックによる輸送距離が短縮されることで、ドライバーの運転時間が減り、労働環境の改善に直結します。
さらに、燃料使用量が抑えられ、CO₂排出量の削減にも貢献します。これはまさに、トラックドライバーの労働時間制限が強化される「2024年問題」の解決策のひとつでもあります。
当社では混載輸送や倉庫との協業といった取り組みに加え、こうしたモーダルシフトの導入も積極的に進めており、業界全体の課題に対して主体的に取り組む姿勢を大切にしています。
モーダルシフトとカーボンオフセットは未来の物流を支える
加えて、当社は「Jクレジット制度」を活用したカーボンオフセットにも取り組んでいます。
Jクレジット制度とは、企業や自治体などが行ったCO₂など温室効果ガスの排出削減や吸収量の実績を「クレジット」として認証し、売買やオフセットに活用できる国の制度です。
地球温暖化対策として、企業に対してもCO₂削減目標の達成が求められる中、Jクレジットの活用は、段階的な目標クリアに向けた有効な手段となります。
モーダルシフトによる輸送の最適化は、ドライバー不足や労務負担といった物流の2024年問題への対策であると同時に、CO₂削減という環境面の課題にも大きく貢献するものです。
さらに、Jクレジットによるカーボンオフセットと組み合わせることで、社会全体の脱炭素への取り組みにもつながります。
次世代物流を支える現場の力
丸吉ロジ(株)が推進する混載輸送、モーダルシフトの導入、アコーディオン幌シャーシの活用、さらにはカーボンオフセット(Jクレジット)による環境対策は、従来の常識にとらわれない“次世代の物流”をかたちづくるものです。
こうした先進的な取り組みを実現できている背景には、変化を恐れず、試行錯誤を重ねながら前進する社内の文化、そして日々の業務を支える従業員一人ひとりの努力と工夫があります。
混載やシャーシ運用の最適化は、倉庫とドライバーの連携なくして成り立ちません。
現場の声に耳を傾け、仕組みを自らの手でより良くしていこうという従業員たちの姿勢が、当社の大きな強みであり、何よりの財産です。
また、これらの挑戦が現場で根づいていくのは、柔軟な発想と理解で共に進んでくださる荷主様のご協力があってこそです。単に効率化を目指すのではなく、すべての関係者が安心して関われる持続可能な物流を築くことが、私たちの目標です。
物流は日本の産業と暮らしを支える社会の基盤です。
だからこそ、現状に甘んじるのではなく、ドライバーや作業スタッフが安心して働き続けられる環境を整え、環境負荷を軽減し、より持続可能な仕組みを築くことが私たちの使命です。
これからも、荷主様・従業員・地域社会とともに、「誰もが関われる、未来につながる物流」を目指し、改善と工夫を続けてまいります。